お金を払ったら経費になる?知っておきたい「短期前払費用の特例」

実は、それが通用しないケースがあります。一方で、うまく使えば節税につながる「短期前払費用の特例」という制度もあります。
この記事では、経費計上のルールをわかりやすく解説します。
1. 経費の原則:支払った時期と経費になる時期はズレることがある
まず基本のルールから確認しましょう。
今期にお金を支払っても、翌期以降の期間に対応する部分は、今期の経費にはなりません。その部分は「前払費用」として翌期以降に経費計上します。
このように、1年分の購読料を7月に払っても、翌年分(R9.1〜6)は今期の経費にできないのが原則です。
2. 短期前払費用の特例:全額を今期の経費にできる
では、毎回期間ごとに厳密に計算しなければいけないのでしょうか?
実は、一定の条件を満たせば、翌期分を含む1年以内の支払いであれば、全額を今期の経費にしてよいという特例があります。これを「短期前払費用の特例」といいます。
今年中に支払った金額が1年以内の期間に対応するものであれば、本来翌期の経費になる部分も含めて、全額を今期の経費にできます。
▼ R8.7 に保険料1年分を支払った場合の比較
(特例なし)
あり
特例を使えば、翌期対応分も含めて今期にまとめて経費計上できるため、今期の節税につながります。ただし、この特例には3つの要件があります。
3. 特例を使うための3つの要件
要件① 支払いの対象がサービス(役務)であること
この特例が使えるのは、「サービスの提供(役務の提供)」に対する支払いに限られます。商品の仕入れなど、モノに対する支払いには使えません。
| 支払いの種類 | 特例の適用 | 主な例 |
|---|---|---|
| 保険料 | ○ | 火災保険・生命保険(事業用)など |
| 賃料・地代 | ○ | 事務所家賃、駐車場代など |
| リース料 | ○ | コピー機・車などのリース |
| サービス使用料 | ○ | クラウドサービス、サブスクリプションなど |
| 電子版雑誌・デジタルコンテンツ | ○ | 電子書籍、オンライン購読など |
| 紙の雑誌・新聞の購読料 | ✗ | 紙媒体は「商品の引き渡し」のため対象外 |
| 商品の仕入れ | ✗ | 販売目的の商品など |
紙の雑誌や新聞は「モノ(商品)の引き渡し」と見なされるため、この特例の対象外です。1年分をまとめて払っても、期間按分が必要です。電子版なら対象になります。
要件② 支払期間が1年以内であること
1年を超える期間分の支払いは、特例の対象になりません。その場合は全額を期間按分する必要があります。
⚠️「特例なら1年分はまとめて経費にできるのでは?」と思われがちですが、支払い全体が1年超である場合は全額を期間按分する必要があります。
要件③ サービス開始の1ヶ月前以内に支払うこと
支払い日からサービス開始日まで1ヶ月を超える場合は、特例が使えず期間按分になります。
支払い(R8.7)からサービス開始(R8.12)まで5ヶ月あるため、1ヶ月前以内の要件を満たさず、特例は使えません。
契約と同時に支払う場合や、翌月開始のサービスを前月末に支払う場合などは問題ありません。
「支払ってからサービスが始まるまでが1ヶ月以内か」を確認しましょう。
まとめ
- 支払った時期と経費になる時期は必ずしも一致しない(期間按分が原則)
- 「短期前払費用の特例」を使えば、1年以内の支払いなら全額を今期の経費にできる
- 特例の対象はサービス(役務)への支払いのみ。紙の雑誌・新聞は対象外
- 支払期間が1年を超える場合は特例NG(全額期間按分が必要)
- 支払いからサービス開始まで1ヶ月を超える場合も特例NG
紙の雑誌・新聞の購読料を1年分そのまま経費に計上してしまうケースが多く見受けられます。特例の対象外ですので、必ず期間按分してください。
「自分のケースでは特例が使えるの?」と思ったら、
お気軽にご相談ください。
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